熊スプレーの廃棄方法と注意点
熊スプレーは保険のような物なので、使わないにこしたことはないですよね。しかし、熊撃退スプレーには使用期限が設けられており、熊スプレーは期限切れでも使えるのか?の記事で触れていますが期限切れの場合性能が著しく低下します。
そのため、古い熊スプレーは処分が必要となりますが、問題はどのように処分をするのかということです。多くの自治体では通常のスプレー缶とは扱いが異なり、「中身が残った状態のまま」では家庭ごみに出せません。本記事では、自治体での正しい処分方法から、購入店やメーカーによる回収サービス、安全に持ち運ぶ際の注意点まで、熊スプレーを安全・確実に手放すための手順をわかりやすく解説します。誤った廃棄で事故を起こさないためにも、適切な方法を事前に知っておきましょう。
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熊スプレーを廃棄する際に考えられる事故リスク
熊スプレー(熊撃退スプレー)は唐辛子由来の強力な刺激成分(カプサイシン)を含むエアゾール缶です。そのため、自宅で安易に中身を放出・処分しようとすると、思わぬ危険を招きます。具体的には、(1)刺激ガスの噴霧による健康被害と(2)火気や高温環境下での引火・破裂事故のリスクが挙げられます。
私自身熊撃退スプレーを噴射したことがあり、かかるとどんな感じになるのか試したことがありますが、カプサイシンの刺激で目を開けていること、呼吸も難しくなります。自分で処理、廃棄する時は屋内では絶対にやってはいけません。
ガス抜き・屋内噴射の過去の事件例
未使用の熊スプレーを屋内で噴射・ガス抜きすれば、唐辛子成分が空間に充満して人体に深刻な影響を及ぼします。例えば、メガネチェーン三城が公開した「6月17日の事案に関するお詫びと経緯」によると、誤廃棄された熊よけスプレーが社内で微量噴射されただけで、建物内の複数の人が喉の痛みや咳込みに見舞われ、消防が出動する事態が札幌市で発生しました。
カプサイシンは目や鼻、皮膚に付着するだけで激しい痛みを引き起こすため非常に危険です。他にも例を挙げると、RSK山陽放送の「催涙スプレー」や「クマよけスプレー」を処分する方法は?というニュースによると、不要になった防犯用スプレーを処分しようと屋内で噴射した結果、児童や教職員計10名が目や喉の痛みを訴え病院搬送される異臭騒ぎが起きています。
このように屋内でスプレーの内容物を放出すると、自分だけでなく周囲にも甚大な被害を及ぼす可能性があります。たとえ屋外でも住宅街や公共の場で噴射すれば周辺に迷惑をかけ、近隣で異臭騒ぎや健康被害を起こす懸念があるため避けるべきです。
自分でガス抜き・噴射処理を行う方法
必要装備と環境: 廃棄作業は必ず人がいない屋外で行いましょう。作業時はゴム手袋・マスク・保護メガネを着用し、刺激成分が肌や目に触れたり吸入したりしないよう防御します。風向きを確認し、近隣の人や自宅に薬剤が飛ばない環境で実施してください。
- 水中での噴射処理: 最も安全で周囲への影響が少ない方法として、バケツの水中に噴射して中身を抜く方法があります。具体的には、十分な大きさのバケツに水を約5リットル張り、その中にスプレー缶を完全に沈めて噴射します。スプレー缶の安全ピン(セーフティクリップ)を外し、ポリ袋越しに噴射レバーを押し続けて内部の内容物とガスを完全に排出してください。水中でしっかり噴射し、缶を軽く振るなどして残留成分もすべて出し切ることがポイントです。水中で行うことで刺激成分が空気中に飛散せず、自分や周囲への被害を最小限にできます。作業中はバケツにポリ袋のカバーをかけて水や薬剤の飛沫を防ぐなど工夫しましょう。

- 人のいない屋外で空噴射: 水中噴射が難しい場合、人気のない屋外に持ち出して空気中に中身を全て噴射する方法もあります。ただしこの方法は風向きによって刺激成分が自分にかかってしまうリスクがあり注意が必要です。住宅街でむやみに噴射すると近隣へ飛散し洗濯物等に付着する恐れもあるため、自宅周辺での処理に不安がある場合は人里離れた場所で風向きと飛散リスクに十分配慮して実施しましょう。内容物を最後まで使い切ったら、後述するようにスプレー缶に穴を開けて残った圧力を抜き、自治体のルールに従って廃棄します。いずれの場合も絶対に自分や他人に薬剤がかからないよう十分注意してください。
ガス噴射後の処理

内容物を完全に出し切る: スプレー缶に穴を開ける前に、内部のガスや液体が完全に排出された状態にすることが何より重要です。内容物が残ったまま容器に穴を開けたり、燃やしたりすると破裂や火災の原因になります。必ず前述の方法で中身を使い切ってください。メーカーの取扱説明でも「内容物が残存している状態で容器に穴を開けたり、容器を焼却したりしない」よう警告されています。出し切りを確認したら次は穴をあけます。(自治体によって穴あけ不要の場合あり)
穴あけは火気のない屋外で行いましょう。スプレー缶を逆さに立てて上部に穴を開けるます。缶を上下逆さにすると内部の液体が下に溜まり、上部にガスが集まります。その状態で上側に穴を開けるとガスだけが先に抜け、続いて開けた穴から残った薬剤(液体成分)を安全に排出できます。この際も顔や肌に液体がかからないよう十分注意し、可能であれば穴を開ける箇所に布を被せて飛散を防止します。ガスが抜けると「シュー」という音が止むので、音が消えるまで待って完全に圧力が抜けたことを確認してください。絶対に内容物が残っている状態で穴あけしないことが事故防止の鉄則です。
使用済みスプレー缶の処分方法
内容物とガスを抜き終えたスプレー缶(空缶)は、各自治体のルールに従って処分します。一般的にはエアゾール缶は「不燃ごみ」または「金属(資源)ごみ」として扱われることが多いですが、市区町村によって分類や出し方が異なります。必ず缶が空であることを確認(振って液音がしない・噴射音がしない状態)してから、以下のように処分してください。
- スプレー缶本体: 中身が完全に空になったスプレー缶は、自治体の指示に従い「不燃ごみ」または「金属ごみ」(資源ごみ)として廃棄します。自治体によってはスプレー缶専用の回収日や区分(例:「危険ごみ」など)に分類している場合もあります。穴あけの要否も自治体で異なり、「ガスを抜いた後でも穴をあけて出す」よう求める地域と、逆に穴あけ不要(そのまま排出)とする地域があります。お住まいの地域のルールを事前に確認しましょう。
- 中身の液体(廃液)の処理: 噴射処理後に残ったカプサイシン入りの液体はそのまま下水や環境中に捨ててはいけません。絶対に排水口や川に流さないでください。無処理で下水や河川に流すと、下水処理施設を一時的に機能停止させたり周辺の水生生物に被害を与える可能性があります。水中噴射法を用いた場合はバケツ内の水ごと高分子吸水剤(凝固剤)を入れてゲル状に固化させ廃液を固め、ポリ袋に移して密封します。固めた液体は可燃ごみ(燃やすごみ)として処分して構いません。※自治体によっては有害ごみ扱いとするかもしれないので、不安な場合は不燃ごみに回収してもらうか自治体に確認してください。廃液を吸収させる資材がない場合、古新聞紙や布切れに噴射して吸着させる方法も考えられますが、その場合も刺激成分を扱う点で十分注意し、吸着させた紙や布は可燃ごみで処分してください。
自治体での扱いを確認する
使用済み・未使用を問わず、熊スプレーは自治体では「スプレー缶(エアゾール式危険物)」として特別に扱われます。家庭ごみとして通常の方法で捨てるのは極めて危険なため、各自治体の定めるルールに従った処分が必要です。特に札幌市のようなヒグマ生息地域の自治体では、熊スプレーの処分方法について公式に注意喚起されています。
危険物・スプレー缶の分類
自治体のごみ分別上、熊スプレーはヘアスプレーや殺虫剤などと同様に「スプレー缶類」に分類されます。自治体によってスプレー缶類の廃棄方法は異なります。スプレー缶・カセットボンベ類は中身を使い切るというの同じですが、穴を開けるのか、穴を開けないのか、他のごみとは別の透明または半透明袋に入れて出すのか、同じ缶類として出すのかというような違いはあります。この点に関しては自治体のルールを確認することが必要です。
どこで引き取ってもらえるの?
自治体ごとの具体的な処分手順を必ず確認しましょう。例えば、札幌市では熊スプレーを含む中身残存スプレー缶は、市の各清掃事務所や消防署、地区リサイクルセンターで引き取り処分しています。家庭ごみ集積所(ごみステーション)には決して出さず、こうした専門施設へ市民が直接持ち込むルールです。持ち込み先では無料で引き取ってもらえるため、事前に電話などで連絡の上、指定の窓口に持参するのが安心です。
「札幌市環境局業務課」など各自治体の担当部署に問い合わせれば、熊スプレーの正しい処分方法を案内してもらえます。自治体によっては危険ごみ回収の特別日程やステーションが設けられている場合もありますので、市町村の公式ウェブサイトやごみ分別案内を確認してください。
なお、中身が残ったスプレー缶を通常収集に出すと、ごみ収集車内や処理施設で発火・破裂事故を起こしうるため厳重に禁止されています。製品評価技術基盤機構(NITE)の「製品安全情報マガジン Vol.433『スプレー缶の事故』によると、残留ガスが原因でごみ収集車の火災が発生し、高額な収集車両の廃車や作業員の危険につながった事例も報告されています。こうした事故を防ぐためにも、自治体の指示通りの方法で確実に処分することが求められます。
店舗・メーカーに回収してもらう
自治体以外の選択肢として、購入先のアウトドアショップやメーカー(輸入代理店)による回収サービスを利用する方法があります。熊スプレーは登山用品店や護身用品専門店でも販売されているため、こうした店舗が独自に使用済みスプレーの引き取りを行っているケースがあります。また、メーカーや正規輸入代理店に相談すれば、安全な処分方法の案内や回収対応をしてもらえる場合があります。
アウトドアショップでの受け入れ
Tolotolo field note の「モンベルも参入!熊スプレーをレンタルできる全国のお店MAP作ってみた」の記事によると、熊スプレーレンタルや販売だけでなく、回収・処分方法の情報提供を行う店舗も増えてきています。専門店は熊スプレーの危険性を熟知しているため、「購入時に処分まで面倒を見てくれる店で買う」のが理想でしょう。
新品を買い替える際には、古いスプレーの処分について遠慮なく販売店に相談してみましょう。
メーカーに直接送る
正規メーカーや輸入代理店に直接問い合わせ、回収を依頼することもできます。ただし、メーカー側で引き取ってもらう場合は事前連絡と輸送手段の確認が必須です。スプレー缶は航空輸送できない危険物のため、宅配便で送る際は必ず陸送扱いにする必要があります。当然ながら送料は自己負担となる場合が多く、メーカーによっては処分手数料がかかることもあります。
熊撃退スプレーは宅配便で送れる?の記事で触れていますが、発送は基本的にヤマトか佐川でしか行えません。
護身用品専門店KSPの「催涙スプレーの廃棄方法と廃棄代行サービス」の案内によると、同店では当初、購入先を問わず使用済みスプレーの無料回収サービスを行っていましたが、悪用する他店が増えたため現在は「当店購入分と同数まで無料(他店購入品でも可)、それ以上は1本あたり有料で回収」という条件に変更しています。このように「正規ルートで購入した製品」に限定して引き取り対応するメーカーや代理店も多いので、問い合わせ時には製品名や購入経路、期限切れであること等を丁寧に伝えるとよいでしょう。
処分してもらうにあたっての注意点
自治体回収や店舗持ち込み、メーカー送付など、いざ熊スプレーを手放す当日には事故防止のための入念な準備が必要です。誤って噴射・破裂させないために、「キャップ(安全装置)の固定」「緩衝材による梱包」「内容物表示」の3点を徹底しましょう。
キャップ固定・緩衝材・表示
まず、スプレーの安全ピンやキャップを確実にロックした状態にしてテープ等で固定し、移動中に噴射レバーが外れるリスクをなくします。未使用品なら購入時についているセーフティクリップがあるはずなので、処分する際も外さず付けたままにしてください(使用済みでクリップが無い場合は、レバーが絶対に押されないよう硬いカバーを被せるかテープ巻きすると良いでしょう)。
次に、スプレー缶本体は必ずビニール袋に入れて密封します。袋に入れることで万一ガス漏れや内容液のにじみ出しがあっても拡散せず被害を最小限に抑えられます。店舗や清掃事務所へ持参する場合も、袋詰めしておけば係の方も安心して受け取れます。
さらに、輸送中の衝撃から守るため缶の周囲を新聞紙やプチプチ緩衝材で包み込みましょう。特に宅配便でメーカー等に送付する際は、箱の中で缶が動かないよう詰め物をして固定し、外部からの圧力で変形・破裂しないよう配慮します。梱包箱の外側には中身が分かるよう「スプレー缶在中(廃棄用)」などと明示した表示を貼ると安心です。
前述のKSPの案内によると、同店へスプレーを送る際も配送伝票の内容物欄へ「防犯用品(スプレー缶)」と記載し、箱の中には「廃棄希望」と書いたメモを同封するよう求められています。これは受け取る側が中身を正しく認識し、安全に取り扱う助けになるためです。持ち込みの場合でも、袋の上からマジックで「熊スプレー(未使用)処分予定品」等と書いておけば、一目で危険物だと分かり慎重に扱ってもらえるでしょう。
まとめ
最後に、熊スプレーを処分する前に確認すべき3ステップをまとめます。
① 自治体ルールの確認:
お住まいの自治体における熊スプレー(エアゾール缶)のごみ分類と出し方を確認します。自治体のごみ分別ガイドや市役所HPを参照し、疑問があれば清掃局などに問い合わせましょう。製品評価技術基盤機構(NITE)の「製品安全情報マガジン Vol.433」の注意喚起によると、「廃棄方法については、お住まいの自治体の指示に従ってください」という点が公式にも強調されています。自治体によっては清掃工場や消防での引き取り制度が用意されており、誤って通常のごみに出すと法律違反になる可能性もあります(刺激性のスプレーを正当な理由なく人に向けて使用・放置すれば軽犯罪法に抵触し得るとの指摘もあります)。熊スプレーの所持や携帯に関する法律上の注意点については、「熊スプレーの法律」の解説記事も事前に確認しておくと安心です。
② 処分手段の検討:
自治体回収以外に、購入店やメーカーによる回収サービスが利用できないか検討します。購入元のアウトドアショップが引き取りに応じてくれるなら、それが安全・確実でしょう。
自力で中身を排出する場合は、メーカー推奨の手順に従うことが大切です。雨具・保護具を着用し人里離れた屋外で全量噴射する方法や、バケツを用いて水中で噴射して廃棄する方法がお勧めです。
③ 包装・搬送の安全対策:
実際に処分実行する段階では、噴射事故と破裂事故の防止策を徹底します。具体的には前述のとおり、スプレー缶の安全ピン固定、ビニール袋密封、緩衝材梱包、注意ラベル表示を行います。輸送中も高温環境を避け、直射日光下に置かないよう注意します。宅配便で送る場合はヤマトか佐川のみです。



